微生物とは

 微生物(microorganism)とは、一般に顕微鏡でなければ観察することのできない、大変小さな生物の総称で、酵母・かび・細菌などのほか、藻類・原生動物も含まれています。この微生物は地球上のあらゆるところに生息し、土壌、水、植物、動物、人体、空中などどこにでもいます。

 我々醸造・発酵食品分野では古くから微生物を活用してきました。しかし、17世紀に顕微鏡が開発されるまで、その姿を見ることはできませんでした。その後多くの科学者によって次々と新たな菌体が発見され、現在も続いています。

 微生物には人間の生活に役立つ働きをするものとそうでないものがあります。そのうち前者を有用微生物、後者を有害微生物と呼んでいます。だだし、それらは使用目的や環境によって逆の立場になることもあります。ここでは醸造に利用されている微生物を中心に簡単に説明してみようと思います。


▲粟長醤油トップ  ▲発酵食品の秘密  ▲微生物入門トップ

●もっと詳しく知りたい人は、醸造・発酵食品、科学・バイオテクノロジーのリンク集へどうぞ。

微生物の種類

 醸造・発酵食品分野では様々な微生物が利用されていますが、主なものとして酵母(yeast)、かび(mold)、細菌(bacteria)などがあります。

 一般的に使われているこれらの呼び方は俗名であり、学名ではそれぞれの菌体を属(genus)種(species)によって細かく分類・命名されています。

 これは二名法(二名式命名法)というもので、生物の分類にはいくつかの階級があり、似たような特性を持つ生物ごとにグループ化・分類され、一般的には、
◇界→門→綱→目→科→属→種
◇(kingdom→division→class→order→family→genus→species)
という階層構造に分類されています。このうち下階層の属と種を用いて表記されています。また、種の後に亜種(subspecies=sub.)や変種(variety=var.)が付く場合もあります。

 表記は微生物の特徴を表すようなラテン語、またはラテン語化されたギリシャ語で、正式にはイタリック体、属の初めの文字は大文字、種はすべて小文字で書かれます。

■微生物の名前や特徴など、詳しくはATCCJCMWDCM などで調べられます。

俗名 属名
酵母 Saccharomyces, Candida, Torulopsis, Zygosaccharomyces など
かび Aspergillus, Mucor, Penicilliun, Rhizopus など
細菌 Acetobacter, Bacillus, Lactobacillus, Pediococcus など
 

さらにそれぞれの属を種で分類し、菌株の名前が付けられています。
例えば、Saccharomyces cerevisiae
Kluyveromyces marxianus var. marxianus など

 微生物は属と種によって分類されていますが、何を基準に分類されているのか?これは大変難しいのですが簡単に説明すると、微生物株の特性を分析し、上記の分類体系に従い既知の種と比較します。当てはまらない場合はその特性を明らかにし新種となります。この作業を同定といいます。

 以前は菌体の形態、胞子形成、分裂パターン、生態、発酵形式、グラム染色、酸素・栄養要求性などを分析して分類していましたが、近年は分子生物学の発達により、細胞壁の組成、キノン分子種、DNA・RNAの塩基配列なども分析し、より正確で迅速な分類・同定を行っています。


▲粟長醤油トップ  ▲発酵食品の秘密  ▲微生物入門トップ

微生物の特徴・利用分野

 それでは実際に利用されている微生物を紹介しましょう。名前の最初の部分が「属」次が「種」となっています。

酵母

酵母

Saccharomyces cerevisiae

グルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、シュクロース、マルトースを発酵するが、乳糖は発酵しない。
形は球形または卵形であり、アルコール生成力が強い。
清酒、ビール、ワイン、パンなど非常に多くの食品で利用されている酵母。

Zygosaccharomyces rouxii

アルコール発酵能は高くないが、耐塩性を有するため醤油になど利用される。

かび

かび

Aspergillus oryzae

コウジカビの代表種で黄麹菌とも呼ばれる。デンプン分解、タンパク質分解力が強い。利用分野は多岐にわたり、清酒・味噌・醤油・みりんなどがある。

Aspergillus sojae

タンパク質分解力が特に強く、分生子の表面に小突起がある。醤油製造に利用される。

Penicillium roqueforti

青かびと呼ばれるもので、ロックフォールチーズの製造に利用される。

細菌

細菌

Acetobacter aceti

酢酸菌と呼ばれるもので、無胞子。エタノールから酢酸をつくるので、酢の製造に利用される。

Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus

乳酸菌の一種で長桿菌。発酵乳の製造に利用されている。至適温度が高いのが特徴。

Pediococcus halophilus

耐塩性の乳酸菌で4連球菌。醤油、味噌に利用される。


▲粟長醤油トップ  ▲発酵食品の秘密  ▲微生物入門トップ

微生物が食品に利用される理由

 なぜ微生物が食品に利用されているのか?その理由は微生物の代謝及びつくり出す酵素によって、食品の成分・味・香り・色などを変化させることができるからです。

 たとえば、醤油は大豆と小麦、清酒は米、チーズは乳、ワインはブドウの成分を微生物によって、味、香り、物性、テクスチャー、色などを変えてそれぞれ新たな食品に仕上げられるのです。 参考:発酵食品の秘密


微生物の代謝によってつくられるもの

酵母によるアルコール発酵

糖質をアルコールと二酸化炭素にする

酵母によるアルコール発酵

酢酸菌による酢酸発酵

エチルアルコールを酢酸にする

酢酸菌による酢酸発酵

乳酸菌による乳酸発酵

糖質を乳酸にする

乳酸菌による乳酸発酵

微生物が生成する酵素によって変化するもの

タンパク質、炭水化物、脂質、繊維質など


 そして、いずれの作用も中核をなすのは酵素(enzyme)です。この酵素なくしては醸造・発酵食品は作れないのです。また、微生物よりつくり出される様々な酵素は、食品だけではなく医学・工業分野でも広く用いられています。

▲粟長醤油トップ  ▲発酵食品の秘密  ▲微生物入門トップ

●醸造・発酵食品、科学・バイオテクノロジー関連ページのリンク集

Copyright(C) 2001-2004 AWACHO SHOYU Co.,Ltd. All rights reserved 粟長醤油