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しょうゆの秘密

日本が誇る万能調味料「しょうゆ」。日本人の食生活に密着していながら、その詳細はあまり知られていません。日本における醤油の年間消費量は1人当たり8.4L(2000年)であり、ビールの消費量56.4L(1999年)の約15%にもなります。これは瓶ビール約10本を飲むと、1Lペットボトル醤油を1本使う計算になります。

しょうゆの起源については定説はありませんが、遙か昔に中国から醤(ひしお)が日本に伝わり、それを調味料として使っていたことや、鎌倉時代(1254年)に禅僧覚心が宗(中国)から径山寺味噌(未醤)の製法を学んできて、紀州湯浅でその製法を教え、その味噌桶の底に溜まった液がとても美味しかったことから、その液を調味料として使い始め、これが溜しょうゆの原型となったなどが推察されています。しかしこれらは現在の醤油とは異なるもので、これらのものがその後、日本で独自に進化・改良されて現在の醤油になったものとされています。

また、醤油という文字は慶長二年(1597年)の「節用集 易林本」(当時の国語辞典)に登場しており、この頃にはすでに商業化されていたことが分かっています。当社のある大野においての醤油の始まりは、江戸時代(元和年間 1615〜1624)。大野の町人、直江屋伊兵衛が紀州湯浅で醸造法を学び、伝えたことが始まりとされています。

知って得する醤油のおいしさ

その一 製造の秘密(醤油の製造方法) DOWNUP

蒸煮した大豆と、煎って割砕した小麦を混合したものに、種麹(微生物を培養したもの)を接種し生育させます。これが麹と呼ばれるもので、この作業を製麹(せいきく)といいます。

大豆や小麦を熱処理するのは、タンパク質の変性・デンプンのα化を行い麹菌の酵素作用を受け易くすることと、水分調整、付着している雑菌の殺菌を行うためです。

出来上がった麹を食塩水に漬け込み発酵させます。これがもろみで、熟成には6ヶ月〜1年ほどかかります。

熟成したもろみを圧搾機にかけて圧搾し、生しょうゆと粕に分けます。この醤油が生揚(きあげ)醤油です。

次に生揚醤油を火入(ひいれ)します。火入とは加熱することで、香味・色沢の調熟、殺菌、酵素の失活、熱凝固物の除去が行われます。醤油の香ばしい風味はこの火入で生まれます。

最後に火入によって生じたオリ(沈殿物)をろ過して、醤油のできあがりです。

工程図

醤油の工程図
その二 発酵の秘密(醤油の醸造・発酵現象) DOWNUP

熟成中のもろみの中では次のようなことが起こっています。

まず、麹の麹菌(かび:Aspergillus oryzae、Aspergillus sojae など)により生産された酵素(プロテアーゼやアミラーゼ)にて、原料中のデンプンやタンパク質が分解されブドウ糖、麦芽糖、ペプチド、アミノ酸となります。

アミノ酸は醤油のうま味の中心となる成分で、ブドウ糖や麦芽糖は甘味を与えると同時に、酵母や乳酸菌の栄養源となります。しかしこれらの麹菌は、食塩濃度が高く酸素の少ないもろみ中では繁殖できず、約2〜3ヶ月で死滅し、その後は酵素だけが働いて分解が行われます。

しだいに耐塩性の乳酸菌 Pediococcus halophilus などが増殖し、乳酸が生成されpHが下がります。この乳酸により醤油の味に締まりが付きます。

そして耐塩性の酵母 Zygosaccharomyces rouxii が増殖し、糖分からアルコールや微量の有機酸、エステルを、アミノ酸から高級アルコールを生成します。これらは醤油の香味形成に重要な役割を果たします。

しだいに Zygosaccharomyces rouxii は消失し、代わりに Candida 属の耐塩性酵母(Candida versatilis など)が生育してきます。この酵母は後熟酵母と呼ばれ、醤油香気の代表成分4-エチルグアヤコールや4-エチルフェノールなどを生成します。

このほかにも数種の細菌が共同作用して、熟成が進につれてアミノ酸、有機酸、アミン、エステル、アルコールなどが増え、香味は複雑なものになっていきます。また、アミノ酸と糖分(ペントース)が反応して色素が作られ、時間経過と共に着色していきます。

このように、もろみ中ではかび・酵母・細菌および酵素の絶妙な連係プレーが行われ、約6ヶ月〜1年ほどの時間をかけておいしい醤油が出来上がります。従来これら乳酸菌や酵母は自然発生的に生育していましたが、近年は品質を一定にするため選択培養して添加する場合もあります。また、製麹や発酵・熟成は温度や湿度、酸素、時間の管理が非常に微妙で難しいため、おいしい醤油を造るために日々研究・改良されています。

原料成分の変化

原料成分の変化
その三 種類の秘密(醤油の種類) UP

醤油の種類は以下の5種類に分類されており、さらに3つの生産方式(本醸造、新式醸造、アミノ酸液混合)があります。

種類 特徴 製造方法
こいくちしょうゆ 一般的に使われている醤油です。味と香りのバランスが優れた醤油です。 大豆とほぼ等量の小麦を用いて麹を作り、食塩水を加えて発酵させます。
うすくちしょうゆ 濃口醤油よりも色がうすく、塩分が若干高めの醤油です。全国的に使われていますが、特に関西圏で多く使用されています。 濃口醤油とほとんど同じですが、食塩分を高くして発酵を抑制したり、火入(ひいれ)温度を低めにしたりして色沢の濃化を抑制しています。また、もろみに甘酒を加えることもあります。
たまりしょうゆ 味と色が濃厚でどろっとした醤油です。愛知、三重、岐阜を中心とした地域で生産されています。 大豆または大豆に少量の小麦を加えた麹を作り、食塩水を加えて発酵させます。
しろしょうゆ 淡口醤油よりさらに色がうすく、糖分の多い醤油です。愛知県が主産地ですが、千葉県などでも作られています。 溜醤油とは逆の配合で小麦に少量の大豆を加えた麹を作り、食塩水を加えて発酵させます。色の濃化を抑制するため発酵期間は短くしています。
さいしこみしょうゆ 味も色も濃厚な醤油で、主に西日本で使われています。 大豆とほぼ等量の小麦を用いて麹を作り、食塩水のかわりに生揚醤油を加えて発酵させます。つまり二度醤油を仕込んだような形式となります。

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